2010-02-20

マネジメントを考え(てい)る

会社の人と話をして、国際事務機器がおかしいという話になった。
以前はメーカーだったのがソフトウェア会社になりつつあり、その先にはマネジメント会社への変貌を考えているような気のするブルーな会社。


ソフトウェアのライセンス。ライセンス自体は実体のある製品ではないから、お金を取ろうと思ったら何を単位としてそれに単価を設定するかということになります。Windowsならパソコン1台に1個ですが、ものによってはCPU1個に1ライセンスというものもありますし、そのソフトウェアによって恩恵を受ける人数を基準とすることもありますし、OracleDBみたいにCPUのコアの数量を基準とする場合もあります。


IBMのソフトウェアはあらかたPVU(プロセッサ バリュー ユニット)という単位で売ります。CPUコア課金の一形態なのですが、CPUの種類によって基準となる評価数を変えて、それにコアの数を乗じて料金が算出されます。たとえばXeon5450を2個乗せているサーバーであれば、1コア50PVU、4コアのCPUが2個乗ってるから400PVUなので、1PVUの400倍の価格、ということになります。SPARCやPOWER5、Opteronなど、CPUによってそれぞれ1コアの評価値(PVU)は違います。


コア課金の場合、CPUのコアは誰がどう見ても2個なり4個なりの客観的数量に落ちつきますが、PVUの場合、基準となるPVUを決めるのはIBM。PVUの評価をいじれば好きなように1CPUあたりの基準金額を変えられるというのがキモ。


路線価を変えれば狭い土地からもたんまり固定資産税を取れるようなもの。


で、IBMのライセンスが高い。IBMに限ったことじゃないけど。


憤慨しておられました。おまえらどうやってこれ売ってんだ? と言いたいと。


ばいざうぇー


どうやったら顧客に気付かれずにもっと多く搾り取れるかというのは、経営者ならちょっとは脳裏をかすめることだと思う。もう少し欲しいなあと思うことはきっとある。でも、客はもっと安かったらなあと思っているのは間違いない。売る方になるかどうかというのは人によってあったりなかったりだけど、買う方になったことのない人はまずおるまい。


ビジネスの要諦はどうやって気前よく反復継続してより多くのお金をお支払いいただくかにある。気前よく払いたくなければ逃げられる。逃げられたくなければ囲い込むことだが、それが満足なレベルでできるのはマイクロソフトと公権力だけだろう。


一般的には巧いこと言いくるめて払わせちゃうわけだけど、「騙された!」となるとこれは非常にマズい。「反復継続」が成立しなくなる。だから嘘に嘘をミルフィーユ状態になる。こうなると結果は2つしかない。現実が嘘に近づいてくることで辻褄があってセーフになるか、破綻か。


前者は希望的観測というやつで、購入するものがコモディティである限り前者はまず成り立たない。コモディティかつプレミアムということが可能なら成り立ちうる。たとえば牛肉。オージービーフも大田原牛も牛肉という点では一緒だし、栄養価を見れば脂肪の量が違うという程度だろう。ビタミンやミネラルの量がそんなに変わるとは思えないし、そもそも一般消費者はそんな観点で牛肉を選ばない。


プレミアムというのは、動機付けだ。成分が全く同じチョコレートならば、同じ価格であるはずだ。でも、たとえば初めから割れているので食べやすいとか、ひとかたまりがピンポン球くらいあって食べごたえが半端でないとか、原価以外の付加価値の部分だ。チョコレートや牛肉の例のように付加価値に訴求力があればいい。


でも、ビジネス用のソフトウェアは完璧なまでにコモディティだ。アバターがついてて可愛らしいとか、DVDメディアにジャニタレの画像があるとか、そういうのは全く期待されていない。完璧なまでに道具として優れていて、かつ安いことが求められている。では、道具としてはほぼ同等の評価がされていたらどうか。価格だ。


もちろんソフトウェアはそれだけではない。サービスとサポートだ。でも、両者を必要としていない顧客には売れないだろう。ガソリン屋さんはオリーブオイルやごま油は買うだろう。でも灯油や軽油、ガソリンは間に合っている。仕入れ以外の理由で買うわけがない。


多くのお客さんは現状にかなり満足している。それなのに新しくものをより高く買ってもらおうというのであれば、もっと便利になることをアピールするしかない。でも、そんな機能はいらないと言われたら、さてどうするかということになる。フォード車はレギュラーガソリンでよいのに、どうやって儲けよう。貴方ならどうするだろうか。僕ならガソリン屋の傍らフォード車を売る。


#金融危機でGMもクライスラーも潰れたのに、フォードだけ潰れなかった。多分経営哲学が素晴らしいせいなんだろう。顧客が気にしているのは燃料消費率ではなく、ガソリン代だということを適切に見抜いていた。まだ炭素税かかってないからね。そうすると、ディーゼルハイブリッドなんてものが今後出てくるのかも知れない。


マネジメントは経営と和訳されるけど、経営というと数字いじりやお金のことばかり前面に出てきている気がしてあまり好まないので、あえてマネジメントという単語を選ぶ。「人をどう動かしてどうやって巧くやるか」がマネジメントと捉えている。


恣意的に価格をつり上げるようなマネをして継続反復したビジネスを途切れさせ、あるいは間口を狭くするというのは、マネジメントとして成功だろうか。

0 件のコメント: