2010-04-09

少子化対策に本当に必要なもの


少子化対策は選択的夫婦別姓、子ども手当て、男女共同参画、育児休暇の充実、待機児童の解消などという「小手先」の施策で解消するものではない。小田嶋 隆氏はここらへんのうちのひとつを看破している。


子ども手当も、あれは、必ずしも現実の子供のための施策ではない。(略)

少なくとも、少子化対策ではない。

的外れだ。

というのも、少子化は、子供の問題ではなくて、父母の問題だからだ。 
子供は勝手にそこら辺から生えて来るものではなく、明確にその意志を持った人間によって"生産"される。だから、新たに生まれてくる子どもが少ないというのは、まだ2人以上の父母になってない人間の問題。

次に、子供手当て自体はこれから出産しようという人向けではなく、実質的に既に出産を終えた人向けの施策であるということだ。子供手当てがあるからといって子作りに励むカップルが果たしているだろうか。マスコミのインタビューも既に子どもがいる人間向けに終始していた感がある。大事なのは今生きてる子供が育つことじゃない。新たに生まれてくる子どもが増えることだ。誰もそこに突っ込まない。
父母候補であるところの若い人たちの人生観の問題――というよりも、少子化は、「若者の○○離れ」という言い方で総称される広範な現象のうちのひ とつなのだ。

「若者の野球離れ」「若者の活字離れ」「若者のビール離れ」「若者の結婚式離れ」「若者のクルマ離れ」……と、あまたある若い人たちの消極化傾向のひと つに、「子供離れ」(あるいは結婚および出産離れ)がある、と、そう考えなければならない。

人間離れではない。が、若者は、若者離れしている。まるで老後の子供みたいに。

原因は、おそらく、彼らの未来に希望が見えないからだ。

必ずしも、貧しさそれ自体が、彼らをシュリンクさせているのではない。
「死に至る病」そのものですね。

四十年前の若者は、いまの若者と比べて、より貧しかった。が、その彼らは、いまの若者よりもずっと消費的で、より活発で、享楽的で、楽天的で、宵 越しの金を持たなかった。

なぜか。それは、彼らが「右肩上がりの未来」を信じていたからだ。現在は貧しくても、明日は今日より良い日になる、と、そういうふうに、時系列に沿っ て、あらゆる事態を楽観していたからだ。

が、現代の若者は、先行きにあまり期待していない。

先すぼまりの感じを抱いている。
まさに正鵠ど真ん中。戦争直後、広島と長崎には最強最悪の兵器「核爆弾」の爪痕が残り、今では人口800万を擁する東京都特別区も焼け野原。食料はコンビニの廃棄弁当なんて想像もつかない状況だったろう。今では少なくとも芋がらを食べようとは思わない。

でも、少なくとも働いたら働いただけ暮らしは良くなると信じることはできた。周りは焼け野原なので当然といえば当然かも知れない。更に悪くなるということはあるとしても富士山大噴火か、日本沈没くらいのものだろう。


お国が、本当に少子化をどうにかしたいのであれば、なによりも先にまず、若年層に向けた安定雇用の施策を打ち出さねばならないはずだ。

少なくとも、若者が若者らしい浪費に邁進できる未来を、たしかなビジョンとして提示すべきだ。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20100408/213891/?P=4


少子化、高齢化、地方経済の低迷、税収、年金、待機児童問題、子育ての孤立化、などなど、いろいろな問題はあるだろう。

ただ、そのうち少子化に関する問題は雇用と収入の安定で改善可能な問題だということだ。雇用と収入が安定すれば、将来設計ができる。何が何でも子どもは欲しくないという人間はそうそう多くはないだろう。余裕があれば持ちたいのが人間だろう。
あるいは、発想を変えてみよう。出生率が高いのは子供にも労働力が求められる途上国が多い。ならば、子供も働かさないと生きていけないような苛烈な国家を目指してはどうだろう。少なくとも出生率は上がるだろう。そんな国はまっぴらゴメンだけど。


と書いている間に、関係性のある2つの記事。

ある日の取材帰り、電車の中で隣に並んだリクルートスーツ姿の女子2人が、大きな声で話していました。

「落ちた企業の商品なんて、もう絶対買わないよね」

「あんな会社、もう社名すら見たくない」

未来の日本や消費を担う学生たちに、そう言わしめるような就活でいいのでしょうか。


こうして消費意欲を減退させて一体何になるのか。人を採る方の年寄り層は、既得権益を捨てて何が本当に自社のためになるのか、自国のためになるのか、深く考えた方がいい。

でも、私たちには本当にそんな余裕はなくて、こと経済面に関しては夢なんて見ていられないということくらい、この消費傾向を見て分かってほしい。 私たちは別に、車や酒を嫌っているわけではないのです。手に入るならほしい、けれど今の私たちにはその代償を支払う余力がない。ただただそんなシンプルな 理由で避けているだけです。そんなこと、きっととっくに分かっているのでしょうけれどね。分かっていて知らぬ振りを決め込んでいるんだ。

そして、私個人として願っていることは、これ以上私たちにまとわりつかないでほしい、ということです。もはや、私たちや私たちに近い世代全員を助 けろとは言わない。ただ、バブルという海溝の向こう側にいながら、私たちを『若者亡国論』の首謀者に仕立て上げようとするその企みを再生産しないでほし い。あなたたちが私たちを勝手に分類し、ラベリングして貶め、過度な期待=重荷を負わせ、役立たないアドバイスを押しつけないでほしい。そういう言説を読 む度に私はえらくしんどい気分になってしまって、たまにはこういう質の怒りをはっきり表明しておきたいと思いました。


2つはどちらとも消費性向に関する論述だけれども、別に子供だってクルマや酒と何ら変わらない。それと関わり合い、ともに時間を過ごし、楽しむという点において。

大事なのは、お偉方が自らの報酬を削ってでも若年層に安定した雇用と収入を約束することだ。多少削れば1つの企業で3人は雇えるだろう。多額の役員報酬を支払っている企業がみな数人雇用を増やすだけでちょっとは違うはずだ。

「法人税下げてくれ」だけじゃなく、「人雇うから法人税下げてくれ」くらいのバーターはあっても良いんじゃない?

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